3人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
「特には…いえ、この蛇の鱗のような肌を普通の人のようにできますか?」
無理だと分かってはいるけど、私を悩ませているのは、この肌のことだけだ。
「造作もない。しかし、まだ脱皮には少し早い。三日後の満月の夜にここにくるといい。脱皮して美しい肌の人間になるだろう」
「脱皮…私は爬虫類ではありませんが…」
「神の加護が強すぎる者は、様々な形で脱皮する。お前もその一人。名は何という?」
「儚です。あのあなたは…」
「我は大物主(オオモノヌシ)。儚、三日後の夜を楽しみにしている」
一際強い風が吹いて、気付くと私は一人でその場に座り込んでいた。
三日後、私はひどく体調を崩してしまい、床の間を離れられず、食事どころか水を飲むのも一苦労だった。
じっと寝ていたいのに、こういう時に限って閑がやってくる。
聞きたくもない用件付きで。
「儚ちゃん、今度の豊作豊水祈願は私達二人が舞を披露するんですって。私は麒麟様からもらった打掛を着て踊ろうと思うの。儚ちゃんはどうするの?」
それは今度でいいじゃない。
私は横になっていたいのに…。
適当に答えて、早くいなくなってもらおう。
「私はいつもの巫女装束で踊るわ。打掛とか持ってないから…」
「儚ちゃんって、綺麗な舞扇持っているよね?あれ貸してちょうだい。私の打掛と色も合うし」
最初のコメントを投稿しよう!