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桜の花びらの中で待った日々を思い出し、どんな動きをしていたか、どんな所作なら、舞扇がなくてもおかしくないかをじっくり考える。
「やめよ!此度の祈願は中止だ!」
急に大きな声が聞こえて、私は扉を開けて、外の様子を窺う。
声を発したのは大物主様のようで、怒りを露わにして立ち上がっている。
「お前が持っている舞扇は、我が幼き頃の儚に与えたもの…我の巫女の神宝(カンダカラ)を使うとは何様のつもりだ!」
「閑…巫女に与える神宝はそれぞれ順序が決まっているんだ。キミは家から舞扇を持ってきていたと言っていただろう?」
「違うの!儚ちゃんが貸してくれたの!この打掛に似合うからって!」
「閑…それはダメだよ。僕達に嘘を言っても、僕達は本質が見えるんだから。キミに僕の巫女である資格はなくなった…。残念だけど、僕にはキミに恩恵をあげることはできない。僕があげた神宝は全てあげるよ、何の効力もない打掛や小物ばかりだから…」
「え…?麒麟様…」
舞台に座り込んでしまった閑に、麒麟様は冷たい目で見ている。
今までの優しい麒麟様は何だったんだろう…?
閑のことは気の毒だけど、今は肌がビリビリして、何だか皮膚が破れてしまうんじゃないかってくらい痛くて怖い。
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