できそこないの巫女は桜に舞う

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結局儀式は中止となったけど、私は大物主様の前でたまに舞を披露している。 大物主様が喜んでくれるので、もっときちんと舞いたいな…。 麒麟様は閑と完全に縁を切ってしまい、閑は実家に戻されてずっとあの打掛を着ているのだと風の噂で聞いた。 私の舞扇は麒麟様が持ってきて返してくれたが、あまり使う気になれない。 そして豊作豊水祈願は神職に就いている者が執り行うことになり、私や閑のような巫女制度は廃止されたのだそうだ。 「儚、何をしているんだ?」 「新しく咲いている花があったので、見ていたんです。ここにあるものは木の葉一枚でも手に取ってはならない決まりでしょう?」 「お前は手に取ってもいいんだがな。我の血族の一員になったのならば、何も問題はない」 「えっ!?」 ダメだと思って、花を触らないように見ているだけだったんだけど、触れてもよかったんだ…。 それでも見るだけにしよう。 いきなり摘まれたら花だって痛いと思うかもしれない。 もう祈願する儀式はないけど、私と同じ境遇の子が巫女にならず、太陽の下を笑顔で歩ける世界になりますように…。
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