薄幸乙女は愛される

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誰かの声が聞こえる…。 よく知っている声なんだけど…。 「後は決められた通りに薬を飲ませ、栄養のつくものを食べさせてあげてください。あまりに細すぎる。少しでもいいので、太陽の光を浴びさせるのも健康には良いでしょうな」 「はい、分かりました」 誰の声もしなくなって、誰の気配もしなくなった気がして、そっと目を開ける。 ここは…私の寝室みたい。 気を失ってしまって、幸彦さんは驚いた…いえ、都与とデエトなのだから、心配はしていないか…。 「あ、よかった!目が覚めて…!」 「ユキ…?」 思わずそう呼んでしまった。 幸彦さんの心配そうな顔が、ユキと重なって見えて…。 幸彦さんにもユキにも失礼だわ。 「…やっと呼んでくれた。久しぶりだなイク」 「ユ…キ…?本当に幸彦さんがユキなの…?」 「そう。なかなか気付いてくれないから、もうちょっとで拗ねるところだったかな」 「まぁ…!ユキったら…」 起き上がりたかったけど、ユキに強く止められて、布団に寝たままで、思い出話で盛り上がった。 ユキと幸彦さんがまだ重ならない方が多いけど、やっぱり笑顔と砕けた言葉遣いは私の覚えているユキだわ。 それが一番嬉しかった。 熱が出たり、傷が引きつるようなこともあったけど、順調に治ってきて抜糸もした。 怖くて痛かったけど、ユキがいてくれたから乗り越えられた。
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