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「イク…オレはそろそろこの家を出る。イクはどうする?一緒にくるか?」
「え?私は…」
分かっている…私が一緒にいたら、ユキに迷惑がかかる。
それでも一緒にいていいの?
本当の気持ち…言ってもいいのなら…。
「私はユキと一緒にいたい。だからついて行くわ」
ユキが差し伸べた手を取った。
大きく力強い、でも少し冷たくて優しい手。
この手を取ったことは決して後悔しないわ。
この話はユキから聞いたのだけど、父と継母は特高に連れていかれたらしい。
母の死後、家が裕福になったのは、父が賄賂をもらっていたから…。
そして継妹の都与は…継母の娘ではあったけど、父の娘ではなかった。
その都与は継母の姉が嫁いだ先の農家で、農作業をすることを条件に、家に置いてもらうことになったらしい。
私の家はユキの家の山遠理家の親戚筋の人が住んで管理してくれる。
私に「いつでもいらしてください」とユキに言付けてくれたみたいで、その言葉をありがたく頂いた。
「今日はお仕事は?」
「今日は休み。それにイクが無理をするといけないから、一日お目付け役をしようかと思って」
「無理はしないっていつも言っているのに…。少し日にあたるくらいで、ちゃんと日傘も使っているから…」
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