1.二度目は好きにならない

3/16
1339人が本棚に入れています
本棚に追加
/119ページ
 颯は幼いころから身体が弱かった。体格も小さくて、運動が苦手。体育のドッヂボールではいつも逃げ回ってばかりだった。  性格も暗いから、あまり友達はできなかった。引っ込み思案で人と話すのは苦手。高校生になったころには、会話をして変なことを言って余計に嫌われるのが怖くて、ひとりきりになることを望むようにすらなっていた。  卒業後、颯は日雇いバイトやアルバイトなどを転々としながら生きている。  オメガには三ヶ月に一度、ヒートと呼ばれる発情期がある。発情期は一週間程度続き、その間は仕事などできない。  ポンコツオメガの颯は、抑制剤の効きも悪くてヒートを管理できなかった。  ヒートが来るタイミングも乱れていて、いつヒートが起こるか自分でも把握できない。突然ヒートになってアルバイトを欠勤することもあり、急に一週間も休まれたら迷惑だとクビになったことも何度もある。ヒート休暇なんてものは底辺の颯には許されなかったからだ。  両親の離婚後、どちらの親からも要らないと言われてしまった颯は施設で育った。  施設の大人たちは、なんでも連帯責任にするから、出来の悪い颯のせいで他の子どもたちまで叩かれる。そのため施設の子どもたちからも、颯は避けられていた。  成人して施設を出てからは安アパートでひとりきり。まともに働けないから生活は苦しくて、ろくに食べられない日もあって、初めて諒大に会った日も、空腹と疲労で眩暈を起こして階段から落ちたのだ。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!