2人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
しかし、その願いは叶うことはなかった。約束したその日の夜、病院一帯に春の嵐が吹き荒れ桜の花びらを全て散らしてしまったのである。
満開後の散華ではなく、春の嵐によっての散華は不運としか言いようがない。
さくらは春の嵐の風雨に濡れる病室の窓ガラスを恨めしげな目で見つめることしか出来なかった。
「お父さんとお花見出来ると思ったのに。ばか……」
邦知は優しく微笑みながらさくらを慰めた。
「また、来年があるさ。来年こそはお花見に行こうな?」
さくらは小指を差し出した。
「お父さん、約束して? 来年絶対お花見に連れてってくれるって」
邦知も小指を差し出し、お互いに小指を引っ掛けあった。
「「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ます。指切った」」
最初のコメントを投稿しよう!