お父さんとお花見に行きたくて

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 邦知はさくらの病室へと訪れていた。さくらは邦知の顔を見た途端に満面の笑みを浮かべた。 「お父さん! 来てくれたんだ!」 「あ、ああ…… 来たよ。元気か?」 「最近は頭がボーッとしたり、心臓がバクバク言うことが増えたかな? 前より体が怠い日ばっかり」 やはり、病状は悪化していると言うことか。邦知は心の中で溜息を()いた。 「あ、そうだ。一年前の約束覚えてる? 正確には十一ヶ月前なんだけど」 「一年前?」 「お花見、連れてってくれるって約束したでしょ?」 「あ、ああ…… 約束したな」 「桜が咲くの、楽しみだな!」 しかし、例年桜が開花されると予想される三月下旬にはもうさくらの命は…… 四月までは保たない。 邦知は少しでも早く桜が開花して欲しいと祈ることしか出来なかった。
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