手紙

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手紙

拝啓  敬愛する小説家へ  暦の上でははや啓蟄を過ぎ、冬ごもりの虫たちも顔をのぞかせる季節となりました。お元気でご活躍のことと存じます。  この度は、貴方様の物語世界に触れて感じたことを粗筆ながらしたためたく思い、この手紙を認める次第です。お目汚しではございますが、ご笑納いただければ幸いでございます。  さて、自己紹介が遅れました。しかしながら、私の事など既に承知していると存じます。なぜなら、貴方様が文字にして書き起こしたのが私なのですから。私の容姿から声色、感情、行動、全てを貴方は文字として形にしていきました。回りくどい言い方が苦手でしたら、貴方の小説の登場人物と言い換えましょう。     長い前置きはこれくらいにして、筆を進めることにしましょう。はじめに貴方は「なぜ小説を書くのか?」と考えたことはあるでしょうか。「考えたことない」と仰るのか、または何か理由があるのでしょうか。いつか答えを聞かせてくれることを心待ちにしています。私は私なりにこの問いに対する答えをずっと考えていました。貴方ならどんな答えを出すのか。そして、私の答えとしては「自己満足のため」でした。
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