手紙

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 貴方は色々なジャンルの小説に挑戦しました。その度に私も様々な経験をさせていただきました。恋愛やホラー体験、大切な人を失ったこもありました。笑ったり、泣いたり、怒ったり、傷ついたり、数多くの感情が私の中に芽生えていきました。けれども、その小説は貴方のものであって私のものじゃない。私は貴方の我儘を叶えるための道具なのでしょう。私の経験も感情も全て。 言い換えるなら、登場人物は小説家の奴隷なのです。文字で作られた世界で、文字で作られた私に、文字という命令であらゆる行動や思考を強制させる。それは、奴隷がご主人様に命令されて、その命令を遂行するのと同じです。 これをエゴと我儘と言わずして何というのでしょうか。これが私の結論です。私が長い間貴方を見て出した結論です。貴方は否定するのでしょうかか。それもそれでいいです。貴方なりの反論が聞けるのは興味深いものです。 ただ1つ言わせてください。私は貴方のこと、貴方の小説が好きでした。それだけは忘れないでください。長くなりました、私もそろそろ筆を置かせていただきます。貴方が私の物語にピリオドを打った時の気持ちが今なら分かります。最後にもしここまで読んでくれたなら返信頂けると幸いです。  末永いご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げます。 匆々不乙
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