いきている、いきている。

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いきている、いきている。

 みんなはエイプリルフールに、嘘をついたことはあるだろうか?  相手を傷つけたり、苦しめる嘘でないならなんでもどんな嘘でもついていい日。一説によると“嘘をついていいのは午前中だけ”って説もあるらしいが、詳しいことはよくわからない。元々は海外の風習だったのが日本にやってきて、そこそこ定着しているらしいという話だけれど。  今日ここで語るのは、僕が小学生だった頃の話。単純に怖い、と言うだけの話じゃない。正直、僕はあの日のことを一生後悔している。いくらエイプリルフールだからって、言っていいことといけないことはあるのだから。  それは、兄貴との些細な会話から始まる。兄貴は俺より一つ年上の小学校四年生だった。春休み、二人でトレーディングカードゲームをしながら雑談をしていた。丁度このころ感染症が流行り始めていて、子供たちも基本的にステイホームで対応しろとか言われていた時期である。あんまり友達と遊ぶことができず、遊んだところで精々同じマンションに住んでる子とマンションの中で追いかけっこをするくらいが精々だった。  僕達はまだ兄弟で一緒に家にいることが多かったからマシだったと思う。両親は共働きで家にいなかったけれど、それでも兄弟二人ならゲームもできるしお喋りもできる、一緒にテレビや動画を見て騒ぐこともできたのだから。 「あ、悪いけどその攻撃は通すわけにはいかないんだわ。ほい速攻魔法。星遺物ぽいー」 「あ、ちょ、除外ゾーンに逃げるなあ!」 「でもってここで攻撃力下がったドラゴンさんはそのまま攻撃表示で場に残るんだよなー。なお本日はスピードデュエルルールだからメインフェイズ2はないです」 「待って兄貴待ってしぬしぬしぬしぬ」 「ちゃんと伏せ除去しなかったお前が悪い。はい、効果ダメージと総攻撃で終了。さいなら」 「NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!リベンジ、リベンジいいいいいいい!今度こそ兄貴に勝つうううううううううううううう!!」 「いいけどお前、もう青眼デッキはやめとけよ。どうしても使うなら再構築しとけ、弱点バレバレ。あと事故率高すぎ」 「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬなんでブルーアイズデッキでトリックスターに勝てないんだこんちくしょう……」  弟相手でも兄はまったく容赦しない。遊戯王でもポケモンカードでもワンピースカードでも彼に勝てたためしはまったくなかった。地団駄を踏む僕の前でデッキを片付けながら、ふと彼はカレンダーを見てこんなことを言う。 「そういえば、今日はエイプリルフールだな。忘れてたけど」  多分、そこで思い出したのだろう。ニヤリと笑ってこう続けたのである。 「なあ雄馬知ってるか?エイプリルフールには、絶対ついちゃいけない嘘があるんだぜ?」
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