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ちょっと弥次喜多(赤坂にて)2
やっと喜多さんへの疑いは晴れたものの、それでもまだ何かに化かされている気分の弥次さん。とうとう宿の亭主を呼び出して、
「ここはどこだ?」
と尋ねます。自分達から来たくせにそんな事言われ、戸惑いながらも亭主が、
「えー、ここはどこだと聞かれましても、赤坂宿でございます」
と答えます。
「本当か?おいら達を騙そうってんじゃねぇだろうな」
随分な言いがかりです。
「だ、騙す?なんでまた、そんな滅相もない」
「この宿には人がたくさんいるように見えるが、もしかして、卵塔場(たくさん並んでる墓を人に見立てさせて化かしてるん)じゃねえのか?」
とさらなる言いがかり。
滅相もございません、あいすみません本日は、取り込んでおりますのでと、亭主がその場を離れてからも、弥次さんの疑心暗鬼は泊まりません(-_-;)
お疲れでしょう、お風呂をどうぞ、料理をどうぞと女中さんに勧められますが、
「どうせ風呂は骨壺で、出てきた料理は馬糞に違いない!」と、弥次さん、風呂も入らず食事もとろうとしません。
喜多さん、もう黙っていられません。
「ええい、もういい加減にしねえか!」そう言うなり、弥次さんの背中をドンと叩きました。
「アイタタタタ!ん?痛え所を見るとおいらは化かされていねえんだな」
途端に機嫌よく飲み食いを始めます。
よく見れば料理が豪華です。そこへ現れた先ほどの亭主、今夜この宿で甥が祝言をあげますので、少しおやかましいかもしれません、お料理はそのお詫びでございますと頭を下げて出ていきました。
夜も更けた頃、顔をのぞかせた女中さんから、お騒がせしました、婚礼も無事終わりましたと挨拶を受けたまではよかったのですが……。
新婚さんが隣の部屋に泊まると聞いた二人。あろうことか真夜中、襖をすこーしだけと言いながら開けて覗こうとします。
隣の部屋の行灯は消えて真っ暗。
よく見えないと、段々前のめりになりすぎて、なんとふすまごとバターン!と勢いよく倒れてしまいました。
大きな音に驚いたのは婚礼で疲れ果て眠っていた新婚さん。
飛び起きて抱き合って驚く二人と、襖ごと倒れてる弥次さん喜多さんと目が合ってしまいます。何も言えず驚いてる新婚さんに
「ハ、ハハハ、こいつはすみませんね、厠へ行こうとしたんだが、イヤ~寝ぼけてしまったようで、すみませんね、へへへ」
終始笑ってごまかし、襖を立て直すとピシャリと閉めてしまいました。
襖が倒れた拍子に行灯を倒してしまったようで、隣の部屋は油まみれになった様子。
それからすぐに隣の部屋に女中さん達が呼ばれ、飛び散った油で汚れた着物や布団や畳などの始末に大わらわとなりました。
弥次喜多の赤坂宿でのお話しでした。
弥次さん、さっきまで、狐、狐、悪狐!騙されないぞ!と騒いでいたのに、なんという急な方向転換。
気の毒なのは新婚さんと、宿の女中さん達。
そしてこの話し、騙されたのは、いつか怪談になるのかもと思い読み進めた読者かもしれないですね🦊💦
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