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【静と動】1
二分割した左側に出茶屋、右側に広い田と宿場町が描かれています。
真ん中の線から左が動、右側が静の風景ともいえるかなと思います。広重が好んで描く静と動がここにもありました。
松の奥に見えている杭は宿場町の境界線を表す標示杭、この杭から奥が袋井宿となります。
出茶屋(よしず張りの簡易茶屋)で旅人と駕籠かきさん達が一休み。おかみさんが火箸で竃の炭を搔いてる横で煙管に火を貰う籠かき人足さん。相棒は駕籠にめり込むように座って休憩中です。
よしず張りの簡易茶屋は簡単に畳むことができました。旅人が通る日中店を開け簡単な茶菓を供し、夕方になると畳んで店じまいです。赤丸にも見えますが旅の必需品わらじも売っていたようです。
疲れた体を休め、時には新しい草鞋を贖いもうひと踏ん張り。街道を行く旅人にとってホッとできる場所だったのではないかな?と想像します。
見ての通り、竃も道に直に石を組み上げただけの簡単なものです。竃の上のヤカンに括りつけられた紐はどうやら自在鉤の代わりのようです。
自在鉤は天井の梁から吊り下げられているものですが、なんと街道の松をちゃっかり梁代わりに使っています。
松の下に店を構えたこの場所ならではの工夫ですね(*´▽`*)
立ち上り流れていく煙、よく見るともくもくとした様子も細かく描かれています。
広重『東海道五拾三次 袋井・出茶屋ノ図』,保永堂. 国立国会図書館デジタルコレクション
旅人の座った足の置き方、寛ぎ方、おかみさんが竃を覗くしぐさ、煙管に火をつけようとする人足さんの膝に手を置いて身を折る姿。
どれもが見た事やった事のある日常の動きです。
動いている最中の一瞬を切り取ったかのような姿だからこそ、この前後を補正して動いているように感じるのかもしれないな、と、そんな風に思います。
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