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【十字】【位置移動?】
【十字】
真ん中に太い杉と空に向かう焚き火の煙、それと交わるように真っすぐの地平線、きれいな十字の構図の一枚です。
木々の縦の線と田や空の横の線がそれぞれ繰り返されることで規則正しいスッキリとした印象を浮けます。
それだけだと冷たい印象になるところ、街道の緩やかな湾曲が見るものに知らず安心感を与えているそうです。
【位置移動?】
右の青枠の中に浜松城と浜松宿が見えています。
左の赤枠には矢印で示した場所に鳥居が見えるので位置的に野口村にあった浜松八幡宮だと思われます。
野口村の入り口には、「颯々(ざざんざ)の松」と呼ばれる30本ほどの松林がありました。
籤引き将軍と呼ばれた室町幕府6代将軍 足利義教(あしかがよしのり)が永享4年(1433年)に富士見物に訪れた際、この松林の中にあった、台風でアーチ型に湾曲した松の下に座り
「浜松の音はざざんざ」
と詠んだことに由来していると言われています。
さてさて、では、お城を背にしているこの松林は何?ここが野口村の入り口だとすると、あの鳥居の場所はどこ?どっからの視点なんだろう?
古地図をぐるぐると回しながら、はたと思い当たる事が。
広重はこのシリーズを描く時、その土地のランドマークを見易いところにポイっと場所移動することがありました。
『この土地にはこんな観光名所がありますよ』と紹介する観光名所ダイジェスト版だと捉え、完璧な位置関係は重要視していなかったようです。
旅行雑誌の表紙(今なら旅行サイトでしょうか)にその地域の観光名所や名物の写真がバンバンと載ってるあの感じに近いかな?と思います。
ですので、「颯々(ざざんざ)の松」も見えやすいこの位置までぐぐぐっと持ってきたのかもしれません。(ちょっとした思いつきなので違っていたらすぐさま訂正しますのでご指摘ください)
紹介されていれば見てみたい、行ってみたい、食べてみたいと思いますよね。江戸時代の人もきっと同じ感覚だと思います。
人が集まる所に便乗して藩や幕府のお知らせ立て札が見えます。その隣には宿場の堺を知らせる表示杭も見えています。
~閑話休題~
4人の兄弟で籤を引いた結果将軍となった足利義教(あしかがよしのり)。
くじ引き将軍とちょっとユーモラスな響きですが、その実かなりの恐怖政治を強いた人でした。
元服前に寺に預けられ精進と己の才覚で座主(比叡山延暦寺最高地位)にまでなっていたのに、寺での修行はなんだったのかと思うほどすぐに激高する性格で容赦がなかったといいます。
座主にまでなった比叡山と激しく対立、家臣達もいつ領土や命を奪われるか戦々恐々、最後は疑心暗鬼に陥った家臣の邸宅で首を取られるといった一生でした。
なんでくじ引きで将軍を決めるなんてそんな重大なことを?と思い調べてみると、籤引きは元々、神様に選んでいただく神聖なる神事と考えられていたようです。
神様が選んだ後継者には誰も文句はつけられないですね。
年代的に近い?ところで籤引で決まったものには明治の元号があります。
明治天皇自ら籤引きされて決定したものでした。
古地図は(浜松市立中央図書館/浜松市文化遺産デジタルアーカイブ)を使わせて頂きました。
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