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26.日坂宿【東海道名所圖會】【広重の思い】
広重はこの絵を描くにあたり下の図(東海道名所圖會:佐夜中山挿絵)を参考にしたようです。
一見全く違うように見えますが、山々を縦走する街道を目で辿っていくと確かに左の頁の下、四角で囲んだ部分に夜泣石を覗き込んでいる旅人の姿がありました。
視点が違いますが、なるほど構図がよく似ています。
【広重の思い】
名所図会では旅人が夜泣石のすぐ側まで寄って覗き込んでいます。多少腰は引けてるようですが、取り囲む3人とも怖いもの見たさで近寄っているように見えます。
対して広重版からは非常に静かな印象を受けました。 更に旅人の中に母子連れを描き込むことで、怖れや興味本位だけではない石に対しての広重なりの思いを表しているようにも感じられたのですが、皆様はどんなふうに感じられたでしょうか。
石に近付き切れない母親からは五十三次に度々描かれる「祈り」を感じる事が出来ます。
荷物に隠れて見えませんが膝の曲げ具合から小腰を屈めて手を合わせているのではないかと思います。子供はそんな母親をじっと見つめています。
後ろは彼女の夫でしょうか。歩を進めようとしながらも妻の祈りが終わるのを待っているようにも見えます。
見せたい場面をクローズアップし、誇張を上手く使い、石と人の距離感という手法で伝えたいメッセージをも込めた広重は流石だなと改めて思います。
※東海道名所図会は、龝里籬嶌 編『東海道名所圖會 6巻』[4],小林新兵衞 [ほか10名],寛政9 [1797]. 国立国会図書館デジタルコレクションを加工したものを使用しています。
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