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「奏くん!」
どうすれば良いのか分からず、とぼとぼと歩いていた俺の名前を誰かが呼んだ。
「……おばさん……」
俺を呼んだのはおばさん、美桜のお母さんだった。
「もしかして、美桜に会ったの?」
美桜のお母さんに会うのは、美桜が転んで顎を怪我して病院に運んだ日以来だ。
考えてみれば、あの時のおばさんの様子もおかしかった。
「……美桜に、何があったんですか」
俺の問に、おばさんは押し黙った。
何で、美桜もおばさんも何も話してくれないんだ。
転校するならさっさと言ってくれれば良いだろ。
黙っていなくなられる方が、ムカつくんだよ。
「ちょっと、来て」
おばさんは静かにそう言って、ゆっくりと歩き始めた。
俺は、その何だか悲しそうな背中に着いて行くしかなかった。
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