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「美桜。お母さん達がどうして美桜っていう名前にしたか分かる?」
泣いて震える私の体を、お母さんは自分からそっと離して優しくそう言った。
小さい時に、学校の宿題で『自分の名前の由来』について調べて来なさいって言うのがあったけど何だか忘れてしまった。
私は、泣きながら首を横に振った。
「貴女が産まれた日はね、気持ちの良い青空で、春の陽気が漂う清々しい日だったの。病院の庭に大きな桜の木が咲いていてね。まるで貴女が産まれた事を祝ってくれているみたいだった。その時思ったの。この子の名前は”美桜”にしようって。この桜の木みたいに、美しい桜の花を咲かせて周りの人達を元気にしてくれますようにって」
そんな由来があったんだ。
でも、私全然願い通りになってない。
”美桜”なんて、そんな良い名前私なんかにふさわしくない。
「じゃあ、名前負けしちゃっているね。私こんな病気になって迷惑しか……」
「何言っているの! 美桜は今までいっぱい桜の花を咲かせてくれたじゃない!」
私の言葉を一喝するように、お母さんが大きな声で言った。
大声なんて今まで出した事ないから、驚いた。
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