Lie la la LOVE

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私は涼菜〈すずな〉、現役の大学生で小説家。高校卒業後幼なじみの陽斗〈あきと〉と一緒に上京、陽斗の叔父が経営しているシェアハウスに一緒に住んでいる。他にも同じくらいの年の人たちが住んでいて、たくさんの友達と楽しく暮らしている。あ、それと彼氏はいない。 今日は4/1。エイプリルフールをモチーフにした短編小説の原稿の締め切り日なのだ。現在20時30分、後はクライマックスを書くのみとなっている。今日の23時59分までに出版社宛てにデータを送らないといけないのだが、大学の1学期はじめが締め切りの課題をしていたので後回しになってしまっていた。ご飯も食べたし、よし書くかとリビングでパソコンを開き、作業を始める。 《『好きだよ。』『嘘だ。だって今日エイプリルフールだもん。』『嘘じゃないよ。時計、見てみなよ。』見てみると時計は23時ではなく、いつの間にか0時を指していた。『好きだよ。』私がずっと聞きたかった言葉。『私も。』私がずっと言いたかった言葉。四月二日、私たちは恋人同士になりました。》完 無事送信して、時計を見る。0時まであと4分、ギリギリセーフだ。息をついてテーブルに伏せる。我ながらベタな展開、ベタなセリフだ。果たしてこれで喜ぶ人がいるのだろうか?でも読者は私の書く王道な小説が好きらしい。そう言われれば私も、昔はこんな恋愛が夢だった。ザ王道な恋愛小説や漫画を嫌というほど読んでいた。でも、今まで彼氏ができたこともないし、好きな人ができたと確信したことはない。気づいてしまったのだ。そんな出来事が起こるのは物語の中だけなんだって。そして私はいつも強がり、嘘を吐く。 今は、そんな夢を見たい気分じゃない。(嘘) 彼氏なんてほしくないし。(これも嘘) 寂しくなんてない。(ほんとは嘘) 「彼氏なんていなくても生きていけるもん」と私は小さく呟いた。 「また、そんなこと言う。」そう言って陽斗がリビングに入ってきた。 「電気ついてると思ったら、また徹夜?」そう言って私に毛布をかけ、前の席に座る。「もう寝るよ。あきくんこそ何しに来たの?」私は陽斗のことをあきくんと呼んでいる。そして、私はすずなと呼ばれている。 「すずなまだ起きてるかなって。」 「何それ。」そんなありきたりな会話を交わす。少しの沈黙の後、陽斗が口を開いた。 「俺は、彼女ほしいな。」唐突だな。 「急に何の話?そういわれるとあきくんってかっこいいし性格良いのに彼女いたことないよね。」そのことは長年不思議だった。 「それはさ…、すずなが好きだからだよ。」あー。 「エイプリルフールだからって変な冗談やめてよ。」って言ったら陽斗はもどかしそうな顔をした。 「もう、四月二日だよ。」 「え。」スマホを手に取ると時刻は0時2分を示した。 「ずっと、ずっと前から好きだった。」 「何このシチュエーション、ベタすぎ。」 「こういうの好きでしょ。」好きだったけど…。なんと言っていいか分からず黙っていると陽斗が言った。 「すずなの彼氏になりたい。」びっくりした。陽斗がそんなことを思っていたなんて。でも内心嬉しい、かも。自分でも口角があがっているのを感て、バレないよう毛布で口元を隠す。王道モノも時にはいいかも。 「考えとく。」私はそう言って逃げるようにリビングを後にした。
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