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「おぉ、うまそう……」
彼はじゅるじゅるとよだれを垂らしながら、肉が焼けるのを見つめていた。
時折、脂が炎にしたたり、ジュッという音をたてる。
香ばしい肉の匂いが辺りに充満し、おれも我慢できなくなっていた。
「ほらっ、焼けたぞ」
そう言って、一番美味しいとされる焼き加減で、彼に渡す。
「いただきまー」
と言い終わる前から、彼は肉にかぶりついていた。
大きなブロック肉を吸い付くようにして美味しそうに食べている。
よほど腹が減っていたのだろう。
「うめぇ!焼き加減も最高。さすがだな」
「それは良かった」
おれは精肉関係の仕事をしていたため、少しばかり肉の焼き方を心得ていた。
「でもやっぱり、高級品は違うなぁ」
「久しぶりにいい肉が手に入ったからな。この前、感染病が流行った時はもう食えなくなるかと思ったけど」
「あぁ、あったな。しばらく食用禁止になってたっけ」
「おれらの体には問題ないだろうって話だけど、何があるか分からないしな」
「原因はなに?」
「さぁ、はっきりしてないみたい。薬使っている個体も多いから、弱ってたのかもしれないな」
「確かに最近の肉は脂ノリも悪いし、色艶もない」
彼は残った肉を見つめながら、少し寂しそうな顔をした。
「でも今回は最高ランクの肉だから。脂もしっかり乗ってる」
「もしかしてN5ランク?」
「あぁ。滅多に手に入らないんだから味わって食えよ」
「まじか!? N5なんて、初めて食ったよ!」
彼は大きな目をきらきらと輝かせて、体を震わせている。
そんな様子を見ているとおれも急激に腹が減ってきた。
「この肉、もらいっ!」
といちばん大きなバラ肉にかぶりついた。
お腹まわりにしっかりと脂がついた最高の部位だ。
「んー!やっぱり肉はこうでなくちゃ」
「早いとこ、ダイエットとか言うやつ辞めさせねえと。ガリガリで食べ応えのないやつばっかりになっちまう」
「そうだな。それに最近また共食い始めやがったし」
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