彼岸花の妖精という素晴らしい相棒(健人視点)

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彼岸花の妖精という素晴らしい相棒(健人視点)

僕、三井健人(みついたけひと)が彼岸花の妖精を見つけたのはちょうど絶望の淵にいたタイミングだった。 漫画家デビューして早七年、一作目は人気が出るも、ニ作目以降はずっと泣かず飛ばずで今日も連載作品の打ち切りが決まりましたと編集部から通達されたばかりだった。 SNSの反応を見ても一作目と比べられるばかりだった。 僕は芸人でいうところの一発屋なのだろうか。 最初の勢いだけ良くても後がだめなら意味が無い。 その勢いを継続する事が大事なのだ。 かの有名な海賊漫画の原作者だって二十年以上一つの漫画を描き続けている。 だけど、アニメは途切れる事なく漫画を追うようにして長年放送され、今や実写ドラマも配信されている。 一つの作品だけをずっと描き続けるなんて僕には無理だ。 そう思ってる時点でダメなのかもしれない。 まあ、天才漫画家とたまたま一作目が当たっただけの一発屋漫画家と比べるのもおかしな話だが。 ーーそろそろ契約を切られてもおかしくないかもしれない。 だけど、漫画家という職を失った僕には何が残る? ずっと漫画しか描いて来なかった。 だから、漫画家以外の道を選ぶ自分をイメージ出来ないし、どこの会社も僕なんか欲しがらないだろう。 「彼岸花……?」 アパートに向かって歩いていると、あちらこちらに彼岸花の花が咲いているのを見つけた。 彼岸花ってこんな綺麗な花なんだな。 去年の秋も咲いていたのかもしれないが、認識したのは今年が初めてだった。 公園ならたくさん咲いているだろうか? 何となく、スケッチしてみたくなり僕は公園に赴いた。
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