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はぁはぁ、とため息を漏らす暇もなく、夜琉に連れられた。
「さっきの!
ほんと?」
ホントっ
て言いたい。
今にも彼女に触れたい。
好きだよって、大好きだよって、
夜琉に言いたい。
でも、無理だよ。
だって、夜琉は月のように存在感があって、月のように輝いてて、昏い闇をてらす存在で。
「ねぇ!ねぇ!!!
聞いてる?!」
『陽日!』
名前が呼ばれた。
彼女から
「あ、う、うん…」
「聞こえてるよ」
『夜琉』
「ねぇ、夜ってすき?
アタシは嫌い!
だって何も見えないし、寝ないといけないし、 あと陽日を見れない」
「でもね、朝はすき、だってポカポカしてるし
それに、」
『陽日って名前のあたしの大好きな人がいる』
やめて
やめてくれ、
そんな事言わないでくれ
好きなんだよ。クソが!
どうして、何で!
エイプリルフールについた嘘はその1年は叶わない
迷信だってわかってる、わかってるけど!
「エイプリルフールについた嘘はその1年叶わない?
陽日、エイプリルフールでも、本当の事だったら叶うんだよ。」
そんな言葉をかけないでくれ
やめろ、
やめろ
その甘い言葉を吐かれたら
世界の原理を壊してしまう。
夜は朝じゃない。
月は日に、追いつけない。
「そんなの神様が決めたんじゃん。
人間が従う意味なんてない、アタシは陽日の事 が好きなの!」
プツリ、
何かが切れた音がした。
欲望のままに彼女に手を伸ばし
欲望のままキスをした。
あぁ、やってしまった
でも、なんでかなぁ
後悔なんてなんもなかった
甘い瞳で、それでも、いやそれだからこそ
彼女は獲物を駆り終えたライオンのように、
サメを狩るシャチのような目で
されど、妖艶なほほ笑みを浮かべ
「まぁ、」
「『嘘』何だけどね」
呪いの言葉の後、僕たちの夜が恥まった
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