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「……ん、んぅ……?」
ゆっくりと目を開く。
どうやら僕はベンチで眠ってしまっていたようだ。
「目が覚めたか」
「師匠…………………………あっ!!先生たちは?」
キョロキョロと辺りを見てみるが、先生たちの姿はどこにもない。
「もう行った」
「そう、ですか……」
もっとお話ししていたかったのに……。
「これ、食べてくれって」
師匠が取り出したのは、風呂敷と箱に入ったピンク色の串刺し団子だった。
「お団子……?」
確か師匠は普通の三色団子を食べていたはず。こんなピンク色しかない団子は見ていない。
「手作りだそうだ」
「手作り?どうして僕がここに来ることを…………あっ」
そういえば、ここに来ることになったのは上原先輩からの頼みだった。わざわざ運動不足の上原先輩を現場に行かせるのはどうしてだろうと思っていたが、そういうことだったのか!
──上原先輩が僕に仕事を押し付けるだろうと思って、わざと……!!
「もしかすると、あいつらのゲームのチャットを見ればすぐにわかることだろうな。それより食べないのか?」
「食べます!いただきます!」
僕はお団子を口にする。
ふわりと桜の香りがして、甘くて、もちもちで……。
──まるで、先生に抱き締められているような。
「…………………………」
ぽろぽろと、涙がこぼれ落ちた。
「黒池?」
師匠は心配そうに僕の顔を覗き込む。
「大丈夫……大丈夫、です。今の僕は、いつでも先生たちに会いに行けるんですから……」
僕は笑ってみせた。
「……そうか」
それゆえ。
それゆえ、師匠の言葉がやけに重くのしかかった。
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