男子厨房に入る

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男子厨房に入らず? 男子厨房に入るべからず? どちらが正しいかも分からないが、 そういう言葉がある。 しかし今は令和。 そんな言葉はもしかしたらもう古いのかもしれない。 俺は家族が大事にしてきたキッチンに立つ。 まずは目玉焼き。 彼女はフライパンにこびりつくと 洗うのが大変だと言っていた。 沢山の油を入れれば少なからずこびりつかないだろう。 たぷたぷに油を入れ、その上から卵を落とす。 黄身は割れたしぱちぱちと跳ねて痛い。 暫く油と格闘する。 数分後に残ったのは、見たこともない形状の 【目玉やきと呼べるか微妙なレベルの何か】と、 既に洗いたくないフライパン。 まぁいい。次は鮭を焼こう。 これはグリルに置けばいいだけなので簡単だ。 取りあえず冷蔵庫にあった切り身を置く。 ある程度時間が経ったのでひっくり返そうとするも へばりついてはがれない。 皿へ移そうにも身もぐしゃぐしゃ。 皮はボロボロ。 おまけにへばりついたグリルの中身はもう見たくもない。 もういい。最後にご飯。 スイッチを押していたし先ほど音楽も鳴った。 これなら大丈夫だろうと思ったが、 開けてみるとおかゆ状態だった。 こんなに少ない水で大丈夫か不安になり 途中で水を足したのがいけなかったのか。 取りあえず食卓に並べたものの テーブルで一番おいしそうなのは既製品のたくあんのみだ。 ご飯を作るというのは、こんなにも大変なことだったのか。 45年生きてきたが、この年になって初めて知るとは。 辟易としていると、扉が開く音がした。 あの人が帰ってきたのだ。 「おかえり!」 「あら!どうしたのこれ?」 「俺が作ってみたんだよ。
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