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30、遊園地デート②
和歌は横目で透夜を伺う。
今、和歌の隣を歩くのは、常に警戒心を緩めず、眉間に皺を寄せ、クールな雰囲気を纏うドーベルマンの透夜だ。
それにしても、さっきからすれ違う人達の視線が微妙に気になる。
でもそれは、透夜と遊園地に行くという流れになった時から悟っていた事。
「どうした?」
「透夜さんはやっぱりカッコ良いなって再確認してた所です」
「なんだそれ。それより、足は寒くないのか?」
「大丈夫ですよ、私、体温高いので」
「そうか。でも、寒くなったらちゃんと言えよ、ジャケット貸すから」
「はい、有難うございます。あ、透夜さんウォータースライダーが有ります、乗りましょ」
「和歌は苦手なアトラクションとかあるのか?」
「ないです、絶叫系も高い所も回る物も暗い所もへっちゃらです」
「流石、前世は忍者っ娘だな」
「お互い様です。逆に透夜さんはあるんですか?」
「そうだな・・・しぃて言うなら暗い所かな」
「お化け屋敷いきましょ。怖がる透夜さんは貴重です、見たい」
「こらこら、後悔しても知らないぞ。その前に、ウォータースライダー乗ってくか」
「はい」
遊園地はそれほど込んでおらず、どのアトラクションも少し並べばすぐに順番が回って来る。
ウォータースライダーは、丸太型の深めなボートに一列二人で乗り、水の流れに運ばれて楽しむアトラクションだ。
身長的にも、透夜が後ろ、和歌が前で、ボートに乗り込む。
「行ってらっしゃい」の係員の声でボートは水に揺られながらゆっくりと進み始めた。
ボートは徐々にスピードをあげ、左右に揺れ始める。
「この、迫り来る緊迫感が、なんとも言えないんですよね、ワクワクします」
「和歌」
呼ぶやいなや、透夜は前に居る和歌の腹に腕を回し、身をピタリと寄せて来た。
透夜の髪が和歌の頬を擽る、背中に感じる透夜の体温。
「透夜さん?」
「前世の俺達って要望したのは和歌だろ。昼間も、人の目を盗んでよく軽めのスキンシップはしてただろ?俺達」
そういえば、と思い出す。
どれもこれも透夜が、勝手に触れてくるだけだったが。
「和歌が嫌なら、触れるの控えるよ」
セーター越しに和歌の腹を撫で、後ろから耳たぶを甘噛みしたり、耳の中心へ息を吹きかけたりして戯れてくる透夜。
和歌が少しだけ振り返れば、唇が当たりそうな距離感に透夜の顔。
照れくさそうに笑み、和歌は言う。
「こしゃばゆいですよ。あのね、透夜さん、私は、貴方にキスされるのも、抱きしめられるのも、触れられるのも、全部・・・嬉しいんですよ」
ウォータースライダーはいつの間にか、最後の急降下へと。
*****
そう簡単に脱出が出来ない廃病院を舞台にした迷路お化け屋敷。
観覧車に次ぐ、恐怖難易度が高いと人気なアトラクションだ。
分かれ道が所々で現れ、下手すれば一時間以上も彷徨ってしまう客も居るのだそう。
その為、リタイヤ用のボタンも、スタート時に渡される。
薄暗い中、色んな所から悲鳴が聞こえて来る。
そんな場所で、本来の楽しみ方を全くしていない二人。
「透夜さんの嘘付き、暗い所が苦手って言ってた癖に。騙しましたね、怖がる透夜さん、見て見たかったのに」
「人聞き悪いよ和歌。俺も一応、今は思春期真っ只中の健全な男子なんでね、暗い場所で女子と二人きりなんて、欲情しないとも限らなくて怖いって意味で言ったつもりだったんだけどね」
「私が聡れる訳ありませんよね、それ」
「はい、小休止終わり、続き」
「ぅぐ」
とある病室の監視カメラが届かぬ場所で、隙間なく透夜に力強く抱き寄せられ、卓越されたキスを貰っている和歌。
互いの舌が触れ合う。
透夜は、和歌の舌を己の舌で、突いたり弾いたり舐めたり絡めたりして口内で遊ぶ。
時々、和歌は淫らな甘い刺激に体を震わせている。
何度目かの、どっちのか分からない唾液を和歌はコクンっと飲み込む。
「・・・和歌は、本当に仕事熱心な優しい良い子だね。なぁ、俺以外の男とも、こんな風に仕事してたのか?」
「え?」
「いや、いい、答えなくいい」
「何を言っ・・・ん」
透夜はまた強引に和歌の口を塞ぐ。
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