逆光

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目を覚ますと、やわらかなシーツの感触に体が沈んでいた。 「ここ、は……」 自分が横になっているベッドを囲う白いカーテンと、ツンとした消毒液のにおいから、ここが保健室だと気がついた。 「あら、目が覚めたのね」 明るい声に目を向けると、カーテンの隙間からこちらをうかがう中年の養護教諭がにこりと笑っていた。 「私、なんでここに……いたっ」 体を起こそうとすると、肩がズキッと痛んだ。 「こらこら、無理に動かないの。階段から真っ逆さまに落ちちゃったんだから」 真っ逆さま……。 だとしたら逆にこれだけの怪我で済んでよかった。 いたた、と声を漏らしながら私はゆっくりと体を起こす。 「でもたまたま櫻井先生がすぐ駆けつけてくれたみたいでね、ここまで運んでくれたのよ」 櫻井先生が……? そういえば階段から落ちた時の記憶の最後は、彼が私を呼ぶ声だった。 あのときすぐ駆けつけてくれたんだ。 先生として当たり前のことなのかもしれない。 だけど、こういうことひとつひとつがまた嬉しくて、切ない。 「念のためこのあと病院ね。私は所用で出かけなきゃいけないんだけど、家の人は迎えに来られそう?」 「家族は……仕事なので、ちょっと」 「そっか。じゃあ他の先生に頼んでみるね」 先生はそう言うと、そそくさと保健室を出て行った。 それと入れ替わるように、誰かが足早に保健室へと入ってきた音がした。   
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