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「じゃあまたね、ふたりとも」
「今度はゆっくり食事でもしよう」
「はい、ぜひまた」
それから数時間が経ち、空が夕日に染まり始めた頃。
葉月さんのご両親と別れ、一至さんと私も帰ろうと少し離れた駐車場へと向かい歩いた。
「悪かったな、途中葉月の親と三人にして。気まずかったろ」
「まぁ、少しだけ。でも、葉月さんのご両親に会えてよかったって思った」
会えて、よかった。
あたたかさに触れることができて、よかった。
心から零れたその言葉に思わず笑顔になる私に、先生も安心したように笑った。
「先生、これからたくさん思い出作ろうね」
「なんだよ、いきなり」
「ふたりでたくさん笑って、出掛けて、喧嘩もして、泣いたり怒ったりして。
いつかそれをまた笑いながら、こんなこともあったねって話したりして」
ふたりでたくさん、思い出を作ろう。
語りきれないほどの、思い出を。
「だからずっと、そばにいさせてほしいよ」
いつかくる、終わりの日まで。
ずっと ずっと。
「あぁ。頼まれなくても、そのつもりだ」
先生は小さく頷くと足を止める。
それにつられて私も足を止めると、その腕は私を包むように抱きしめた。
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