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「お前にはこれからいろんな世界が待ってるだろうし、いろんな人との出会もある。
俺みたいなおっさんより若い男が魅力的に見えることもあるかもしれない」
「え!?それはないよ!先生が一番かっこいいって!」
その胸に顔を押し当てたまますかさず否定すると、頭の上で彼が笑う声がした。
「日野は日野のままで、ずっとそばにいてくれ」
『ずっとそばに』。
先生が口にするその言葉にはきっと、いろんな意味や重みが含まれているのだろう。
それを感じながら、私はうなずいた。
「……うん」
いつの日か、どんな命にも終わりはくる。
どんなにその時が辛かろうと、苦しかろうと、その時をともに迎えよう。
「もうすぐ、冬も終わりだね。そしたらすぐに春がくる」
春を過ごし、夏を経て、秋が終わり……また冬がくる。
けれどその次には、また春がくる。
あたたかな 春が。
「……そう、だな」
そうやって季節を越えて、ふたり手を取り合い歩き築いて、たくさんの日々を生きよう。
いつかくるその時に、こんなに悲しい思いをするくらいならあなたに出逢わなければよかった、と思うかもしれない。
それでも最後には必ず、あなたに出逢えてよかった、と心から思えるはずだから。
だから、ずっと。
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