五月雨

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最大音量に設定したスマートフォンのアラームの音が鳴り響き、そっと目を覚ました。 「あさ……」 アラームを止めて、半分しか開かない目で画面を見ると5月6日、朝7時と表示されている。 ねむ……けどそっか、連休が明けて今日から学校だ。 連休中は、アルバイト漬けの毎日だった。 普段から入っているビル清掃のアルバイトに加えて、イベントスタッフにティッシュ配り……。 連日朝から晩まで働いて、休日らしいことはひとつもしていない。 むしろ疲れたなぁ、学校だるい。 ふぁ、と大きなあくびをして部屋を出ると、足音をたてないように気配を消して廊下を歩く。 戸建ての一軒家の中を2階から1階へと降りると、いつもはなにかとにぎやかなリビングからは音ひとつせず人の気配もない。 あれ、と不思議に思うものの、そういえば両親は連休を一日伸ばして今日まで家族旅行に行ってるんだっけ、と思い出した。 そっか、よかった。 ほっと息を吐くと、足音を気にせず私は洗面所へと向かった。 今日はちょっと暖かいし、制服のジャケットはなしでいいかな。 ブラウスの上に黒いトレーナーを着て……と着替えたところで、『ちゃんと制服着ろ!』と叱る櫻井先生の顔が想像できて思わず笑ってしまう。 連休明けで櫻井先生に会うのも久しぶりだ。ちょっとドキドキしちゃう。 にやける顔をひきしめてメイクをすると、髪を巻いて高めの位置でツインテールにした。 よし、今日もばっちり。 寝起きはだるいけど、身支度を終えると気合いが入る。 毎日のように履いているお気に入りのローカットスニーカーに足を通すと、ドアを開けて家を出た。 「……いってきまーす」 小さくつぶやく言葉に、今日も返ってくる声はない。   
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