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「日野さん、三者面談のことだけど……保護者の方なにか言ってた?」
周りに聞こえないよう配慮して小声でたずねる先生に、私は首を横に振った。
「……ううん、なにも。なんか忙しいみたいで」
「そっか、春の三者面談もあと日野さんだけでさ。保護者の方に電話もしてるんだけどなかなかつながらないから」
困ったように笑う先生に、少し申し訳なさを感じながら相槌を打つ。
「進路のこと話す大事な時期だし、僕はいつでも構わないから。保護者の方に日程のこと話してくれるかな」
「んー……一応言ってみる」
曖昧な返事で会話を切り上げ、待ってくれていたふたりの元へ向かう。
三者面談、か……。
ごめん先生、いつまで待ってもうちの親の都合はつかないと思う。
沈みそうになる気持ちを必死でこらえていると、ふたりは不思議そうに私を見た。
「あかり、東となんの話してたの?」
「三者面談のこと」
「あー、まだやってないんだ。進路の話の時期だし、先生もやっておかないとって感じだろうね」
瞳の言葉に頷いて、ふたりへ話題を投げかける。
「進路かぁ……ふたりはもう決まってる?」
「うん。私は将来海外で働きたいから、大学で英語の勉強する。そのうち留学も行きたいんだよね」
「瞳、結構頭いいところ受験するんだよね。私は美容師になるのに専門行くんだー」
海外に美容師に……未来のビジョンが明確なふたりがなんだか眩しくて、さらに気持ちが沈みそうになる。
「はぁ……一生高校生でいたいなぁ」
「留年すれば?あ、キャラメル食べる?」
そういう意味じゃないの……。
さるるんはマイペースに言いながら、私にキャラメルをふたつ手渡した。
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