五月雨

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「で?ボールが頭に直撃したってこと?あっはっは!その光景見たかったー!」 教室では朝のホームルームが行われている頃。 保健室には、椅子に腰掛け不機嫌な顔で氷のうを後頭部にあてる櫻井先生の姿がある。 そしてそれを見ながらお腹を抱えて笑う、ジャージ姿の男性教諭、成田(なりた)先生がいた。 「な、成田先生笑いすぎ……」 「だってさぁ、まるで狙ったように頭にボールぶつけるなんてすごいコントロールじゃない?日野ちゃん、今からでも球技系の部活入ったほうがいいんじゃない?」 「ふざけんな成田!そもそもお前のクラスの生徒が中庭でボール投げてるのが悪い」 あれからあの場は騒然となり、とりあえずぶつけたところを冷そうと保健室へやってきた。 私もやってしまった側として付き添ったわけだけれど、そこへ事情を聞きつけた成田先生がやってきたのだった。 成田先生は、櫻井先生と同じくらいの年齢で2年2組を受け持つ先生だ。 体育教師らしい上下ジャージ姿に、180センチ以上ある長身と筋肉質な体型。 茶色い髪をふわふわと立たせ、はつらつとした大きな声で話す。 いつもニコニコしていて生徒とも友達のように接するところも、どこをとっても櫻井先生とは真逆なタイプだ。 おかしそうにケラケラと笑う成田先生に、櫻井先生の顔はますます不機嫌になっていくが、そんな中でも彼は私の服装に目を留めた。 「そういえば日野、お前今日制服のジャケットはどうした」 「暖かいし上着いらないかなーって」 「じゃあそのトレーナー脱いでジャケットを着るべきだろ」 「まぁまぁ、かわいいしいいじゃない。一至は細かいねぇ」 「甘やかすな!」 成田先生の『一至』呼びに、櫻井先生の遠慮のない言い方。 それらからただの同僚にしては近い距離感を覚えた。   
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