桜色の涙

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私日野あかりが通うのは、東京都多摩市にある都立高校。 偏差値普通、特に強い部活もない。有名な卒業生も特にいないという本当に平凡で、【生徒の個性を尊重した教育】という方針の通り比較的校則の緩い学校だ。 制服をきっちり着ていなくても、メイクをしていても、怒られることは滅多にない。 それをいいことに私も、ブレザージャケットの下にはパーカーを着て、スカートは膝より上。 明るめのミルクティー色のロングヘアを巻いて縛って、メイクもネイルも欠かさない、と日々自由な格好を楽しんでいる。 ちなみに今日はピンク色のパーカーにピンク色のネイル、ゆるめの編み込みツインテールと春っぽい格好にしてみた。 「失礼しまーす」 迎えた放課後、私は校舎1階にある『生徒指導室』と書かれた部屋のドアを開けた。 4人がけの机と椅子が中央に置かれただけの室内。 少し落ちかけた陽の光が照らす窓際には、すでにひとりのシルエットがあった。 「遅い」 そのひと言とともに不機嫌そうな目つきでこちらを見るのは、私をここへ呼び出した張本人・櫻井先生だ。   
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