逆光

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爽やかな水色に入道雲が広がる、夏らしい空。 高校生活最後の夏休みを目前に控えて、教室内は皆どこか浮き足立っている。 そんな心踊る季節……のはずなのに。 私はひとりどんよりと、目の下にクマをつくっていた。 「ねぇちょっと、あかりどうしたのその顔」 「いや、ちょっと最近夜更かしが続いててさ」 「本当?バイト入れすぎなんじゃないの?」 コンシーラーでも隠せないほどのクマに、瞳は心配そうに言う。 「最近メイクも薄いし髪もセットしてないし、なにかあったんじゃないのー?」 席につく私の背後に立ち、セットしていない私の髪を触るさるるんに、ギクっと心臓が跳ねた。 「まさかあかり……この前のテスト、赤点だったとか?」 「それはさるるんでしょ」 「ブッブー!今回はギリギリ赤点回避の43点でしたー!」 「威張れる点数じゃないでしょ……」 さるるんと瞳のまるで漫才のようなやりとりも、いつもなら笑えてしまうのに、今日はうまく笑えなかった。 櫻井先生に告白、のようなものをしてから二週間近くが経つ。 あれから私はつねにあの時のことを思い出してしまい、モヤモヤしては後悔してを繰り返している。 おかげで夜はうまく眠れないし、朝もメイクもヘアセットもやる気になれない。 先生とも極力顔を合わせないように避けて……どうしたらいいかわからずにいる。 ああもう、なんで私あのとき『好き』なんて言っちゃったんだろう。 先生絶対引いてた。意味わからないって顔してた。 あの時のことをまた思い出し、頭を抱える私に、さるるんはどこから取り出したのか携帯用のコテで髪を巻いてくれる。   
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