桜色の涙

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櫻井一至(さくらい かずし)という彼はこの学校で数学教師を務めている、校内一の有名人だ。 というのも左で分けた黒い髪に色白の肌、まるで猫のようなくっきりとした二重が力強い目。 180センチ弱ある長身にスラッとしたスタイルに、ワイシャツとジャケットというシンプルな服装がよく似合っている。 そう、とにかく見た目がいい。 性格は厳しくすぐ怒る。低い声とぶっきらぼうな言い方もあってすごく怖い。 だけど『その怖さすらもかっこいい』と、女子生徒から保護者まで多くの女子を魅了している。 「だってホームルーム長引いちゃったんだもん。そのあとみんなとちょっと喋ったりしてたら、あっという間に1時間経っててさぁ」 「教師に呼ばれてるのに雑談してるな。あと先生には敬語!」 「うぃー」 「よし上等だ。そこに座れ」 適当に返事をした私に、櫻井先生はイラつきを隠すことなく席を指差す。 やばい、調子に乗った。これはお説教が長引くパターンだ。 「あっ、あー!私今日バイトがあったようななかったような!」 「す、わ、れ」 「……はーい」 逃げようとした言い訳も嘘と見透かされている。低い声で命じられ、観念して席についた。 そんな私に対し櫻井先生は、机に右手を置きながらあきれたように深いため息をつく。   
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