逆光

8/16
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/111ページ
その言葉も悲しい表情も、意味がわからない。 だけどひとつだけわかる。 私は彼にとって生徒であり、彼を悲しませる存在。 この恋には、一縷の望みもないということ。 白い掛け布団に、ぽたっとしみがひとつにじむ。 こんなに好きなのに、可能性はない。 改めてもう一度告白することすら、できない。 あふれる涙を止められず、ベッドの上ひとり泣き続けることしかできない。 「日野ちゃーん、お待たせ。成田先生が病院まで連れて行く、よー……」 続いて保健室に入ってきた成田先生は、涙に濡れた私を見て、なにかあったのを察したように一種黙る。 「……よしよし。病院行こっか」 そして優しい言葉とともに、私の頭をポンポンと撫でてくれた。 それから成田先生の運転で近くの総合病院へ行くと、簡単な検査を受けた。 結果肩の打ち身以外はなにも異常なく、問題なく診察を終えた。 「お疲れ」 病院内のラウンジで席について待っていると、会計を終えた成田先生が戻ってきた。 先生はその手に持ったいちごミルクのパックジュースを、私に手渡す。 「はい、喉渇いたでしょ」 「わーい、成田先生ありがとう」 遠慮なくそれを受け取り、ストローを刺して口に含んだ。 その姿を見て成田先生は微笑ましく笑うと、私に向き合う形で席に着く。   
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!