逆光

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「気持ちは落ち着いた?」 それは、先ほど保健室で泣いていたことに対してだろう。 「……うん」 「どうして泣いてたか、聞いても大丈夫?」 優しい問いかけに、話しても大丈夫か一瞬迷うけれど、成田先生ならと信じて話した。 櫻井先生にずっと片想いをしていたこと、衝動的に気持ちを伝えてしまったこと。 拒否され、『つらい』とまで言われてしまったこと。 成田先生は口を挟むことなく、最後まで話をじっくりと聞いてくれた。 「そっか、そんなことがあったんだ」 「先生のこと恋愛対象として思ってるなんて、間違ってるかもしれないけど……それでも好きで、どうしようもなくて」 「うん、わかってる。大人のアドバイスとしては正しくないかもしれないけど、人が人を好きになるのに、立場とか年齢とか関係ないって俺は思うよ」 普通の大人や先生に相談したらきっと、『ただの大人への憧れ』と否定されてしまうかもしれない。 だけど成田先生は真剣さを汲み取って、向き合い肯定してくれる。 とても優しい人だと思った。 「けど、やっぱりか。一至の中で葉月ちゃんの存在は、まだまだ大きいんだなぁ」 「葉月ちゃん……って、その元カノですか?」 「うん」 成田先生が口にした『葉月』と言う名前。 どこか聞き覚えがあると思ったら、あの指輪の内側に刻印されていた名前だ。 やはりあの指輪の持ち主が櫻井先生の想い人だったんだ。   
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