逆光

10/16

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/111ページ
「成田先生も、その葉月さんのこと知ってるんですか?」 「うん。ほら、俺も高校同じだったからさ。よく3人で過ごしたよ」 思い出すように成田先生はスマホを取り出し、画面をスッスッと操作すると私に見せた。 そこに表示されていたのは、今より若い顔つきの成田先生と櫻井先生……そして、ひとりの女性だ。 彼女は小柄な体にふわふわな茶色いロングヘアをハーフアップに束ねた、かわいらしい雰囲気の人。 眩しいほどの笑顔を向け、櫻井先生に腕を組んでいる。 かわいらしい人……あれ、でもうっすらとどこか見た覚えがある気がするような、しないような。 画面を見たまま考え込む私に、成田先生は心を見透かすように笑う。 「日野ちゃん、彼女にちょっと似てるんだよね」 「え?私ですか?」 「うん、髪型とか雰囲気とか。 今朝大人っぽい髪型してたじゃない?あの姿とかすごい似てたから、一至も驚いたんじゃないかな」 今朝の……といえば、さるるんがやってくれたハーフアップの髪型のことだ。 そういえばあのとき、櫻井先生も成田先生も驚いていた。 あれは私に葉月さんの面影が見えていたからなんだ。 「どうしてふたりは別れちゃったんですか?」 確信を突いた問いかけに、成田先生はそれまでの笑顔をなくし、寂しげに目を伏せた。   
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加