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「"葉月"」
鎖骨に口付けながら、太ももをそっと撫でながら。
再び彼女の名前を呼ぶ。
「"葉月"……」
愛おしむように繰り返す声が、その度胸を抉っていく。
きっと、先生は試してる。
『代わりでもいい』という私の言葉が本物かどうかを。
本物に決まってる。
私自身を見てもらえないのなら、代わりになるしかない。
偽物でも先生が求めてくれるならそれでいい。
その目に映りたい。その手に触れてほしい。
大丈夫、怖くなんてない。
悲しくなんて、ない。
唇は徐々に、鎖骨から胸元へ下りていく。
それと同時に右手がブラウスの裾から中へ入り込もうとしてきた、その感触に思わず目をギュッとつむり堪えた。
自分が無意識にした反応にふと我にかえると、彼の手がピタリと止められていた。
なんで、止まって……。
驚き彼を見ようとした瞬間、開けた私の目からは涙があふれ頬を伝った。
こんなの、『いやだ』って言ってるようなものだ。
その涙を目の前に先生は私に触れていた手を離す。
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