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夏休みに入って一週間ほどがたった7月末。
私たちは学校からバスで1時間ほどかけ、奥多摩にあるキャンプ場へやってきた。
今日から一泊二日のキャンプ合宿だ。
「にっく、にっくにっく、にっくにくー!」
広場にて、班別に別れての昼食のバーベキュー中。
さるるんは高らかに歌いながら、熱した網に肉を並べていく。
「さるるんご機嫌だね」
「そりゃあそうよ!朝早くから遥々移動してきて、来たらいきなりの球技大会でもうお腹ぺこぺこ!」
「ほら、あかりも肉食べな。取らないと全部猿田に取られるよ」
瞳は私が手にしていた紙皿にてきぱきと肉や野菜を乗せてくれる。
ふたりと笑って話しながら、どこか視界の端で櫻井先生を探してしまう自分がいる。
……いた。
私たちの班からいくつも離れた先にある班に混じり、櫻井先生は生徒たちと談笑している。
黒いTシャツにジャージという、いつも学校で見るのとは違う姿が新鮮だ。
目で追ってしまうのに、もう話しかけることも目を合わせることもできない。
だって私、櫻井先生にとって最低なことをした。
葉月さんとの思い出を大切にしてきた彼に対して、『代わりでもいい』なんて……本当に、最低だ。
必死に考えてたどり着いたはずの行動なのに、思い返すと子供すぎる自分がいやになる。
……嫌われたよね、きっと。
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