きみは太陽

8/14
前へ
/111ページ
次へ
「ごめんね、一至じゃなくて」 「えっ?そんな……」 冗談めかして言う成田先生の言葉に否定しかけて、けれど心の内を見透かされたような気がした。 ……成田先生が言う通り。 本当は、櫻井先生じゃないかって期待した。 いつだってこういうときに駆けつけてくれるのは、彼だったから。 だけどもう、彼はきてくれない。 私は、先生のことを傷つけることしかできないから。 誰かに見つけてもらえた安心感や、櫻井先生の姿を期待した自分への恥ずかしさ。 彼はもうこないという悲しさなど、いろんな気持ちが一気に押し寄せ、涙となってあふれ出した。 「って、え!?日野ちゃん!?どうしたの!?」 「先生、私……私っ……」 「わぁ!泣かないでー!」 突然泣き出す私に、成田先生は慌ててポケットからハンカチを出して私に差し出した。 「成田先生……ハンカチとか、持ってるんだ」 「持ってるよ!俺どんなイメージなのかな!」 ハンカチを受け取り涙を拭う私に、成田先生は察したように言う。 「あれから、一至となにかあった?」 「……なにかあったっていうか、私が悪いの。 必死になりすぎて、『葉月さんの代わりでいい』って言って、先生のこと怒らせた」 「あー……確かに、それは違うだろうね」 それを聞いて成田先生は納得したように頷く。   
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加