きみは太陽

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「そんなのどうでもいいから。すっぴんならこの前プール掃除のときに見たし。 それよりこの階段手すりもないし、ふざけてると転ぶぞ」 櫻井先生の言葉に「だって」と反論しようとした、その時だった。 言われたそばから足を滑らせ、バランスを崩してしまう。 まるで体を引っ張られるかのように私は後ろへひっくり返った。 「わっ……!」 落ちるっ……! そう思いながらどうも出来ずに、体は宙に浮き落ちていく。 するとそれを繋ぎ止めるように伸ばされた手が、私の腕を掴んだ。 「日野っ……!!」 名前を呼ばれると同時に体は抱きしめられ、私たちはふたり一緒に階段下へと落ちて行った。 「いっ……たぁ〜……」 背中をぶつけた衝撃で一瞬瞑った目を開ける。 そこには抱き締める形で私を庇い、痛みに表情を歪める先生の顔があった。 「先、生……?」 私が小さな声で呼ぶと、櫻井先生は飛び起きて私を見た。 「日野!怪我は!?」 「だ、大丈夫……ありがとう」 「ならよかった……」 背中は少し痛いけど、先生が庇ってくれたおかげで外傷は一切ない。 私の様子に先生は安堵すると、ひと息吸って目をキッとつり上げた。 「このバカ!言ったそばから落ちるな!お前は何回心配かければ気が済むんだ!」 「ごめんごめん!私だっていつもわざとじゃないもん!」 「ったく、ヒヤヒヤさせるなよ……」 ふたり、石段下の地面に座り込んだまま。 朝陽の下の黒い瞳は、キラキラと眩しい光を映す。 今この瞬間しかない、そう思ったら言葉が自然とこぼれた。   
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