桜色の涙

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2年前の高校入学後、『かっこいい先生がいる』と学年内で話題にあがった先生がいた。 それが、櫻井先生だ。 だけど態度は冷たいし校則には厳しいし、服装で注意を受けたこともあり、私は彼のことがちょっと苦手だった。 そんな中、1年生の秋にトラブルは起きた。 同じ委員会の先輩男子に言い寄られ断ったものの、それを知った先輩の彼女に放課後呼び出しをされたのだ。 ひと気のない屋上に続く階段下の踊り場で、彼女含む女子3名に囲まれた。 『あんたさぁ、人の彼氏になにしてんの?』 『なにもしてないです。デートしようとか誘ってきたから断っただけで』 『嘘つくなよ。あんたが言い寄ってきたって彼氏が言ってんだけど!』 彼女にバレ、自分を守るために先輩が嘘をついたのだろう。 私からするとその話は納得できるわけもなく、はっきりと否定した。けれどそれが彼女を余計イラつかせたようだった。 『1年のくせに派手な格好してんのも生意気なんだよ!』 怒鳴り声とともに、私を叩こうと思い切り手を振り上げてきた。 『こら、なにしてる』 ところがその手は、背後からかけられた低い声によって止まる。 振り向くと、そこにはたまたま通りがかったのか、教科書を手にした櫻井先生がいた。 まずい、といったように先輩は手を引っ込めてバツが悪そうな顔をする。 『別に、少し話してただけです……』 『屋上は立ち入り禁止。よってここの階段も近づかないよう言われてるはず』 長い足でスタスタと階段をのぼり近づいてくる。徐々に迫る背の高い姿が、より圧を感じさせた。 『あとそこの3年たち。受験生だろ?変な騒ぎは起こさない方がいいと思うけど』 話が聞こえていたのだろう、釘を刺すように言う櫻井先生に先輩たちは舌打ちをしてその場を走り去った。 バタバタと遠くなる後ろ姿を見届けて、その場に私と彼のふたりになると、櫻井先生は丸めた教科書で軽く私の頭を小突いた。   
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