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2. クスノキに元気を
文句を言ってたわりに実はこの能力、案外生活には便利なこともある。
人のみならず動物や植物、物の声も聞こえてくるため、車やバイクのそばではバッテリーや空気が減ってるとすぐわかる。機械類のバッテリーの残量も見なくてもわかるし、異常に満腹を訴えていれば故障しそうなものと判断できる。
慣れてくればなかなか面白い能力だ。
……なくてもいいけど。
そして付加能力を得た人は大抵がそれを生かした進路を選ぶらしい。
しかも能力を生かした職業に就くと能力手当が貰えるため、それを目当てに職に就く人も多いという。
とは言っても俺は5級だから、手当もお小遣い程度だ。
一応L-SAMOからは進学の道も進められたが、特に学びたいことのない俺は就職を選んだ。
動物の飼育員、自動車整備士、家電量販店店員等、L-SAMOから紹介された職業はいくつもあったが――
「よーし、すぐ水をやるからな」
初級公務員試験になんとか合格して、家からバイクで10分の距離にある植物園で働くことになった。
左耳を塞ぐと小さな声がたくさん聞こえてくる。
〈おなかすいた〉
〈おなかがすいたな〉
〈はらいっぱい〉
〈まんぷくだ〉
植物たちの声だ。
最初は騒がしさに酔いそうだったが、働き始めて2ヶ月ほど経った今は大分慣れてきて、どれがどれの声だかわかるようになってきた。
空腹の植物には水や肥料をやり、何も言わない植物はそのまま。
満腹の植物は要注意という指標になることもわかってきた。
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