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「ゼンくん、ちょっといい? この木、ちょっと元気がないと思うんだ」
植物園の先輩職員・シバさんが示すのは、園の中心にある巨樹・クスノキ。樹齢は300年くらいらしいが、確かに葉の色がくすんでいる。
「ちょっと待ってください」
左耳を塞いで木の幹に近づくと、やがて〈おなかいっぱい〉と苦しげで小さな声が聞こえてきた。生きてはいるが元気がない様子だ。そして食欲もなしか。
「うーん、今あげてる栄養剤はいらないかも」
「そうか……周辺の土がダメなのかな。土の成分とかpHとか調べてみるか」
「俺も頻繁に様子見するようにします」
「頼むよ」
こうやって声を聴くことで、植物たちの健康を維持してやりたい。
「元気にしてやるから頑張れよ」
元気づけるようにトンッと幹を叩いた。
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