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「ーーこれは、参ったなぁ」
西園寺氏は腰へ手をやり、軽口を注意する様子がない。重役と秘書というより兄弟みたいな親しさを感じた。
それとこの場に秘書を伴うのはリスクヘッジの一環だろう。
当然、プール内に監視カメラの設置はしてあるだろうし、何より世界的セレブの西園寺氏が私達に邪な気持ちなど抱くはずない。
「ふふ、西園寺は結城さんのファンでして。憧れの人を前にしたら浮ついてしまうかもしれません。もし、西園寺に何かされましたらすぐ教えて下さい」
口元に手を添え、内緒話をするポーズで伝えられる。こちらの思考を読み取ったみたいで鋭い。
「い、いえ、そんなーー」
「こら聞こえているぞ? 結城さんを困らせるな。ファンなのは認めるけれど」
「光栄です」
心を見透かされ言葉につまったが、西園寺氏のフォローでなんとか持ち直す。
「最初にストレッチをしましょう」
花梨ちゃんへ合図し、入念な準備体操を開始。すると秘書の男性は下がって、以降は言葉を挟む事がなかった。
「西園寺さんもカッコいいんですが、秘書さんもイケメンです〜。ね? 先輩」
「花梨ちゃん! そういう話はーー」
「構いませんよ。格好いいと言われて悪い気はしませんので。結城さんも美しいと言われたら嬉しくないですか? それとも言われ慣れて何も感じない?」
「……私は、まぁ、その」
見た目で判断されるのが苦手だ。しかし本音を告げて空気を悪くしたくない。曖昧に口角を上げておく。
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