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「聞いて下さいよぉ〜。奈美先輩ってば、こんなにキレイなのに自信が無いというか。もっとオシャレしてメイクすれば良いと思いませんかぁ?」
花梨ちゃんは西園寺氏に対して物怖じせず、カジュアルに接する。彼女は人の懐に入るのがとても上手い。
話題が私なのが不満であるものの、無言でストレッチをするよりはいいと割り切ろう。
「そうだなぁ」
西園寺氏はアキレス腱を伸ばしつつ、私を観察した。透き通った青い瞳で探られるうち自然と見返す。
運動不足と言われていたが、その身体つきからして全く心配なさそう。筋肉がしっかりついており、腹筋なんてくっきり割れているじゃないか。
「ーーうん、やはり結城さんはそのままでいいかな。着飾れば当たり前に綺麗だろうが、自然体には敵わないと思うから」
「えっ……」
化粧っ気のない顔を褒められ、憮然としてしまった。
「結城さん? どうかした?」
西園寺氏が傾げる。
「い、いえ、何でも、ありません。気にしないで下さい」
「あれれぇ〜先輩、顔が赤くないですか? そのままでいいなんて全肯定ですもんね? 私も西園寺さんに素っぴんを褒められたいなぁ〜」
「花梨ちゃん!」
厳密には素っぴんじゃない。それでも花梨ちゃんの隣に立てばメイクの密度は明らかで。人前へ出る最低限のエチケットを守っているつもりでも恥ずかしくなってきた。
「西園寺さんも適当な事を仰らないで下さい! 私の容姿に触れないで頂きたいです。スイミング指導と関係ありませんよね!」
うっかり強い口調でシャワーを指差す。
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