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「奈美先輩を振っちゃうなんて、兄貴はどうかしてます。先輩はこんなにキレイで人気があるんだから!」
くるっとパソコンの画面を見せてきて、口コミサイトのレビューを読み上げる。
「元アーティスティックスイミング選手、結城奈美の指導が受けられ感激! マーメイドと呼ばれた結城奈美が間近で見られる! 結城奈美最高! 結婚したい!!」
「ーーねぇ、最後のは書いてないでしょ?」
「バレました? ともかく奈美先輩は私の憧れなんですってば。あ〜本当のお姉ちゃんになって欲しかったな」
「ありがとう。でも、修司と二人で決めたから」
このやりとりは何度もしているが、正直あまり触れたくない。私は時間を確認する仕草を大袈裟にすると鞄を手にした。
「それじゃ、お先に失礼するね。事務所の戸締まり宜しく。嵐が近づいてるからその辺りの対策もお願いね?」
「はいはい、お任せ下さい〜」
島育ちの花梨ちゃんは海の怖さを知っている。バイバイと掲げた腕には恐怖の爪痕が未だ残って、私まで刺激した。
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