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忘れてしまったことがある。
夜、夢を見る。
温い液体の中で、霞がかったなにかの声を聞く。
泥の中から咲く花がある。哀れみを覚えこそすれ、温室で咲く花に勝ることはない。
肯定するものはないのだ。
夜、この世界は空の模様が書かれた天井の下にある子供部屋のように思える。
貴方を探して、居ないと気づくことでしか貴方を思い出せない。
目尻から溢れる泥は、温い。
遠い砂漠の上で、灼熱に焼かれながら蜃気楼を飲んでいる。
別れの言葉は手遅れだ。
自分が砕かれ、オアシスに沈んでいく。
砂漠に見える細い線が、貴方の目には白い皿に映る。
口から溢れる泥は、温い。
温い液体の外から聞こえる声は、私のことを呪っている。
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