核ノ賛歌

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「時間がない。私はもう行く」  統也は止まり木に置いた上着を掴むと立ち上がる。 「待て」  俺の脇を行こうとする統也の背後に立つ。横目でカウンターを窺う。ボーイの姿は無い。  背中に銃口をあてた。小刻みに震える手を抑えるために、小型拳銃がめり込むほど力を込める。 「車に案内しろ」と耳元で囁く。  両手を軽く挙げた統也は、しかし臆する様子はなく「あいかわらずだな」と呟いた。 「本望ではないが、今の私の立場に刃を向けるのは自殺行為になる。やめておけ」  俺は身体を押し付けるように銃を突いた。 「知らん。黙れ」  分かった、と統也は言った。 「であればそのつもりで私も動こう。そのまま私について一緒に駐車場に降りろ。拳銃が見つかるようなヘマはするなよ」  ラウンジでは余興のゲーム大会が繰り広げられていた。その歓声に紛れるように、俺と統也は会場を出た。  通路でアジア系の顔をした巨漢の護衛ふたりが黙って統也の顔色を窺う。統也は頷いて右手を挙げる。手出しをしないようにと統也は静かに指示をした。そのまま俺たちは並んでエレベーターに乗った。握りしめた両手に冷や汗がにじんだ。
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