核ノ賛歌

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 車は高速を降りて港方面に向かうと、臨海副都心のビル群の一角に停車した。  統也はスマホを取り出し電話をかける。一言二言簡潔に指示を出すとスマホを切って俺に視線を向ける。  背後に追走して来た黒いSUVが静かに止まっている。護衛の男が降りてくる気配はなかったが、罠にはまったかもしれないという焦りもあった。だがここまでくれば後には引けない。 「変な企みがあるならやめることだ」  俺は拳銃をふたたび統也に押し付けた。 「そんなものはない」  統也はそう言って息をついた。そしてスマホを内ポケットにしまう前に、先ほどと同様画面を示してくる。  ――俺が逃げないように、銃を突き付けてビルに入れ    片目をつぶるような彼独特の笑顔を俺に向けた。高校の頃と変わらない何もかもお見通しだというような笑顔。  黙れ、と心で叫ぶ。  何年経とうとも俺の中につき纏うその笑顔。  高校時代、何かと張り合いながら俺はいつも統也には敵わなかった。まるで勝負など無かったかのように彼はいつも笑顔で俺を見た。その決して勝てないと思わせるたたずまいに、俺はずっと抗ってきた。  彼のことをどんなに裏切り者となじろうとも、忘れようとしても、統也の笑顔が呪縛の様に俺を苦しめる。自分たちがやっていることは正しいことだと思っていた。その度にいつも頭の片隅に統也の笑った顔が現れる。払いのけながら俺は生きてきた。
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