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王立アカデミー研究所にある一室。
「マドロック様。少しお時間をいただけますか」
マドロックはめんどくさそうな顔になりながらも、
「少しこの場を頼む」
と助手に告げた。
奥の部屋に入るやいなや、ラウラは、
「キシャラから今朝のこと聞きました、カイル・アルグラントは裏があってリーシャに近づいたわけではないようだ、ってちゃんと伝えておいたじゃないですか」
と声をひそめながらも強い口調で言った。
「成績も素行も悪くないし、実際昨日話してみて、わたしはいい子だと思いました。アルグラント商会は王宮とも取引がありますし、後ろ暗いことをしている噂もありません」
「だからなんだ」
にべもなく返ってきた答えにラウラは眉根をよせる。
ラウラとマドロックが昨日二人と出会ったのは、けっして偶然ではなかった。そのことはリーシャも察していた。
だからリーシャは昨日からずっと機嫌が悪かった。今朝に至ってはマドロックに対して反抗的ですらあった。
困ったことにそれはリーシャに限らない。
リーシャとカイル・アルグラントの関係を報告したときからずっと、マドロックの機嫌は悪いのだ。
「ああもう………なんでマドロック様はそう言葉が足りないんですか」
「………」
「彼はいい子ですよ」
「ああ」
「作為的にリーシャに近づいたわけでもない」
「そのようだな」
「リーシャに恋をしているようです」
「………」
認めたくないのはそこか、とラウラは苦笑いした。
「やはりリーシャをあなたに預けるべきではなかったのかもしれませんね」
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