第1章. 現在

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 王立アカデミー研究所にある一室。 「マドロック様。少しお時間をいただけますか」  マドロックはめんどくさそうな顔になりながらも、 「少しこの場を頼む」 と助手に告げた。  奥の部屋に入るやいなや、ラウラは、 「キシャラから今朝のこと聞きました、カイル・アルグラントは裏があってリーシャに近づいたわけではないようだ、ってちゃんと伝えておいたじゃないですか」 と声をひそめながらも強い口調で言った。 「成績も素行も悪くないし、実際昨日話してみて、わたしはいい子だと思いました。アルグラント商会は王宮とも取引がありますし、後ろ暗いことをしている噂もありません」 「だからなんだ」  にべもなく返ってきた答えにラウラは眉根をよせる。  ラウラとマドロックが昨日二人と出会ったのは、けっして偶然ではなかった。そのことはリーシャも察していた。  だからリーシャは昨日からずっと機嫌が悪かった。今朝に至ってはマドロックに対して反抗的ですらあった。  困ったことにそれはリーシャに限らない。  リーシャとカイル・アルグラントの関係を報告したときからずっと、マドロックの機嫌は悪いのだ。 「ああもう………なんでマドロック様はそう言葉が足りないんですか」 「………」 「彼はいい子ですよ」 「ああ」 「作為的にリーシャに近づいたわけでもない」 「そのようだな」 「リーシャに恋をしているようです」 「………」  認めたくないのはそこか、とラウラは苦笑いした。 「やはりリーシャをあなたに預けるべきではなかったのかもしれませんね」
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